椎間板ヘルニア…②

4.治 療
 治療は…と説明する前に行うべき検査があります。それは、脊髄を圧迫する椎間板ヘルニアの部位や状態と神経麻痺の程度、症状を詳しく調べる神経学的検査レントゲン検査を行うことです。こういった検査を総合して、その子に合わせた治療を相談し、決定していきます。
 本題に戻して…治療は、内科療法と外科療法の2つがあります。治療成功率は、椎間板ヘルニアの程度により異なります。軽いものでは大きな差はありませんが、重症になるほど外科療法の方が高い成功率となります。当院では、内科療法・外科療法のどちらも選択可能です。どちらの治療法を選択するかは、状態や状況を診て相談して決定します。
内科療法
 内科療法は椎間板ヘルニアによる脊髄の圧迫が軽度な場合に対して選択する治療法です。
 通常、この治療は、痛みや炎症を抑える薬剤(ステロイド)の投与と4週間の絶対安静を組み合わせて行います。投薬では、脊髄の圧迫は減圧されず(脊髄機能を回復させる直接の作用はなく)、そのまま持続するため、脊髄機能の回復は外科療法に比べて時間がかかります。そのため、内科療法は、重症の脊髄障害、脊髄機能が悪化傾向にある患者、飼育環境や性格により絶対安静が不可能な患者では不向きです。絶対安静が行えない場合、椎間板ヘルニアの状態が悪化して症状が進行する危険性があります。適切な内科療法によって症状が一時的に改善しても、後に椎間板ヘルニアが再発し、脊髄障害は更に重症となる危険性があります。
外科療法
 全身麻酔をかけ、脊髄造影検査やCT、MRIによって椎間板ヘルニアの発生部位を確認した後、片側椎弓切除術により脊髄を露出し、脊髄を圧迫している椎間板を取り除く方法です。
 外科手術に成功したとしても、それはまだ治療中の段階です。神経麻痺が回復するかどうかは、術後のリハビリ治療により左右されます。効果的なものは、麻痺した患部に刺激を与えるジェットバス療法や犬用車椅子で散歩して機能回復を図っていく車椅子療法など自ら歩こうとする意欲を刺激することと足を動かし易い環境を作ることです。いきなり地面を歩かせるよりは、負荷の少ない水の中などがお勧めです。リハビリ療法で大切なのは、獣医師と飼い主、そして愛犬自身の熱意や意欲だと思います。
 以上のように、椎間板ヘルニアが起こっても、適切な治療を行うことで再び歩けるようになります。もちろん、治療に反応しない(治療後も歩けない)子もいます。深部痛覚(痛みを感じること)を失う前に手術を行えば約9割の子が歩行可能になると言われています。反対に、深部痛覚を失った状態で手術をしても、歩けるようになる可能性は6%と低くなります。“おかしいな”と感じたらかかり付けの動物病院に連れて行きましょう。
 最後に稀ですが、重度椎間板疾患の神経学的不全に脊髄軟化症という疾患があります。初期症状は椎間板ヘルニアと同様ですが、日に日に悪化していく進行性の脊髄疾患で、数日で死に至ります。椎間板ヘルニア症状の患者の内、約3~6%がこの疾患と言われています。
5.予 防
 上記したような椎間板ヘルニアになりやすい犬種の場合、子犬の時期から脊椎への過度な負荷、衝撃を避ける飼い方やしつけをすることが重要です。肥満にならないように、食事管理をする事も重要です。また、激しい運動を避けることや滑りにくい環境を整えることも大切です。室内犬の場合、ソファなどへの昇り降りをさせないことも予防の1つです。なりやすい犬種以外でも椎間板ヘルニアにならないとは言い切れません。十分に予防してあげましょう。