犬のバベシア症とは
犬のバベシア症とは??
簡単に言うと、バベシア原虫が体内に入る(マダニの吸血により入ります)ことにより重度の貧血が起こり、最悪の場合、死に至るという非常に恐ろしい感染症です。
原 因
バベシアに感染しているマダニに吸血された際に、その唾液と一緒にバベシアという原虫が犬の体内(血管内)に侵入して感染が成立します。体内に入ったバベシアは、次々と赤血球を破壊して細胞分裂・増殖をくり返す溶血性の疾病です。一言、バベシアと言っても実際は70種類以上が知られており、種類によって寄生する動物が異なります。犬に寄生するバベシアはバベシア・ギブソニ(Babesia gibsoni)とバベシア・カニス(Babesia canis)の2種類です。日本ではバベシアギブソニがほとんどで、バベシア・カニスの感染は限られた地域になります。
感染経路
バベシアの感染は、マダニ(フタトゲチマダニ、ツリガネチマダニ、ヤマトマダニおよびクリイロコイタマダニ)により媒介されます。中国地方を含めた西日本(とくに九州・四国の一部地域)から近畿地方の山野に生息するマダニに広く感染していますが、最近は感染地域の広がり(東への広がり)と、犬バベシア症に感染した犬の移動に伴い全国で発生が認められるようになっています。バベシア原虫がダニからを犬の体内に移るのに36~48時間必要と言われていますので、吸血前にダニを取り除けば感染の可能性を非常に低くすることが出来ます。これ以外に他の感染経路として、輸血や血液に汚染された針および道具、胎盤を通じた母子感染、闘犬及びそれに近い喧嘩によっても感染するようです。余談ですが、バベシア症と同じようにマダニが媒介する病気としては、猫のヘモバルトネラ症、Q熱、ライム病、日本紅斑熱、野兎病などがあります。
症 状
バベシアに感染してから発症するまでの期間は10~21日といわれていますが、潜伏感染する場合もあるので感染の時期を特定するのは困難です。
実際、発症すると症状としては、重度の貧血や脾臓の腫大、肝臓や腎臓の機能障害を起こして黄疸が現れます。放置していると、最悪の場合、死に至ります。お家で感じられる症状としては、発熱、元気・食欲の低下、運動を嫌がる、口や舌・目の結膜の色が薄くなる(白っぽくなる)、おしっこの色が濃くなるなどがあります。
この他に症状の全く無い、無症候性キャリアーと呼ばれるものがあります。初期の感染から回復してもバベシア原虫を体内から完全に駆除することは難しく、再発の可能性を否定することはできません。多くの場合、症状は無い(無症候性)がバベシア原虫はまだ体内に居続ける状態になります。この状態は数ヶ月から数年(またはもっと長く)続きますが、ストレス(環境など)や免疫抑制剤の投与、他の感染症への罹患による体力低下などにより再発する危険性があります。
治療方法
血液検査で寄生体が確認されれば、貧血に対する補助治療とあわせてバベシアに対する薬物治療を行ないます。しかしながら、バベシアを完全に除去できる治療薬はありません。したがって、治療は抗菌剤や抗生物質でバベシアの増殖を抑え、症状を緩和させて犬の体力(免疫)回復を待つという方法を取ります。有効な抗原虫薬はあるにはありますが、副作用が強いため、投薬は慎重におこなう必要があります。
予 防
バベシア症の予防に有効なワクチンはありません。したがって、マダニに噛まれないことが最大の予防策なのです。例えば、マダニの多そうな山や河川敷へ愛犬を連れて行かないようにすること(散歩に出かけるコには非現実的かもしれません・・)やもし行くのであれば、スポットタイプの駆除剤をマダニの活動期(春から秋にかけて)に定期的に投与し、帰宅後には犬の体を入念に調べてダニがついていないことを確認することも必要です(←ブラッシングは重要です)。特に頭や耳、目のまわり、指先などにつくことが多いため入念に見てあげて下さい。心配な方は一年を通して使用されると良いかもしれません。ただし、これは基本的にマダニの早期駆除であって、バベシアの感染予防ではありません。ワンちゃんの調子が悪くなったらすぐに掛かりつけの動物病院に行って下さい。