縫合糸(反応性)肉芽腫とは…
縫合糸肉芽腫(縫合糸反応性肉芽腫)は、手術時に使用する縫合糸に組織が過剰反応することによって起こるとされています。去勢、避妊手術に限らず手術をする場合、血管の結紮や組織の縫合をするにはどうしても外科用の糸(縫合糸)が必要になります。どのような素材の縫合糸を利用したとしても生体にとっては「異物」という事になるので、縫合糸の使用部位で大小の差はありますが、組織反応が起きることになります。縫合糸が原因で組織反応が過度に生じ、肉芽組織ができてしまった物を縫合糸(反応性)肉芽腫と呼んでいます。
近年、獣医系の学会や論文で多数症例報告があがってきています。ミニチュア・ダックスフンド、シーズー、チワワ、コーギー、シェルティ、マルチーズ、トイプードルなど多くの犬種で報告があります。雑種の子でも報告されていますから、純血種のみに起こるわけではありません。先天性の体質で体の中で何らかの免疫異常が起こっているとも言われてますが、実際のところ、原因がはっきりと解明されていません。
誰が“縫合糸(反応性)肉芽腫”を発症するかわかりません。ですから、体に縫合糸を残さない事が唯一の確実な予防策となります。最近ではいわゆる「溶ける糸」・・合成吸収性縫合糸が用いられるようになっているので、もし吸収性糸による強い組織反応が出たとしても、その糸が生体内に吸収されてしまうまでの期間なんとかしのげれば大事には至らないと言うことになります。しかし、吸収される糸だから肉芽腫ができないとは言えません。やはり、理想としては体内にできるだけ異物である糸を残さない手術(無結紮手術)が最も良い方法といえます。
もし、縫合糸肉芽腫になってしまった場合、肉芽腫と残存する縫合糸を除去する手術を行うしか根本的解決方法はありません。手術困難と判定された場合はステロイドをはじめ、免疫抑制剤などを継続的に投薬して反応を抑えていく事になります。
当院では糸を残さない手術を実施しています。詳しくは、次回アップする予定です。