椎間板ヘルニア…①
椎間板ヘルニアは、よく耳にする病気の1つです。まずは、椎間板の仕組みや役割、症状などを簡単にまとめてみました。
1.椎間板の機能と構造
脊髄は、脳からの指令を全身に伝える働きと末梢の感覚などの情報を脳に伝える働きをもちます。脊髄は、脊椎(背骨)によって作られた脊柱管というトンネルの中を走っています。そして、脊椎は椎間板によって強く連結されています。椎間板の構造を断面で見ると、中心部に髄核があり、その周囲を繊維輪が囲んでいます。繊維輪の腹側は厚みがあるのに対して背側は薄く、繊維輪の断裂が起こりやすくなっています。髄核はゼリー状の弾力性に富んだ構造をしており、脊椎に加わる衝撃を吸収する働きを持ちます。
2.椎間板ヘルニアとは…
椎間板に変性が生じて破け、その内容物が飛び出したり、椎間板の形が変形して膨隆したりすると、椎間板の真上に走っている太い脊髄神経に圧迫が加わります。先ほど書いたとおり、脊髄神経は骨のトンネルの中を走っており、下からの圧迫に対して上への逃げ場がありません。その結果、脊髄神経は圧迫をうけて損傷を起こします。これが、椎間板ヘルニアです。椎間板ヘルニアは、以下の2つに分類することが出来ます。
◎ハンセンⅠ型椎間板ヘルニア
ダックスフンド・シーズー・ウェルシュコーギー・ビーグル・コッカースパニエル・ペキニーズ・ラサアプソなどの犬種は、軟骨異栄養性犬種といわれます。この犬種では、2歳齢までに椎間板が変性を起こして脱水し、髄核のゼリー状の滑らかな構造は硬い乾酪状の物質に変化します。このような変化が起こると椎間板の衝撃吸収能が損なわれ、同時に繊維輪も弱くなります。このような状態の椎間板に負荷が加わると、破れた繊維輪から髄核が飛び出し、脊髄を圧迫することになります。多くは3~6歳までの間に急性に発症する傾向にあります。
◎ハンセンⅡ型椎間板ヘルニア
ヨークシャーテリア・マルチーズ・パピヨン・プードル・ミニチュアピンシャー・ミニチュアシュナウザー・ゴールデンレトリバー・ラブラドールレトリバー・シベリアンハスキー・フラットコーテッドレトリバーなどの犬種では椎間板が加齢に伴い変性を起こし、過形成を起こした繊維輪が脊髄を圧迫します。このタイプの椎間板ヘルニアの多くは成犬から老犬に多く起こり、慢性的に経過し悪化します。
椎間板ヘルニアが犬で最も起こりやすい場所は背中の胸椎と腰椎の間と頚椎です。
3.実際の症状としては?
程度の軽い場合では、背中に痛みがあり触ると嫌がったり、足にうまく力が入らず、腰がふらつくなど歩き方に変化が出ます。重症になるにつれて、肢の(不完全または完全)麻痺、排尿障害や痛覚の消失などが起こります。病変が頚部か腰部かによって出てくる症状が異なります。
次回は、椎間板ヘルニア…②(治療や予防について)です。