鼠径ヘルニアについて
動物においても“ヘルニア”と呼ばれるものが多くあります。臍ヘルニア、会陰ヘルニア、椎間板ヘルニア…。今回は、その中の“鼠径(そけい)ヘルニア”についてお話します。
言葉の意味
鼠径 … 足の付け根部分の事
ヘルニア … 体内の臓器などが、本来あるべき位置から脱出した状態
ですので、
鼠径ヘルニアとは、足の付け根あたりに“穴(隙間)”が開いていて、皮膚の下に膀胱や腸といった内臓臓器が飛び出している状態の事を意味しています。通常は、筋肉などでそういった“穴(隙間)”はありませんが、ヘルニアの場合、上手く閉じる事が出来ず開いたままの状態になっています。内臓が飛び出しているわけですから、程度の差はあれ、膨らみが確認されます。出ている内容物が少ないと分かりにくいですが、多いとすぐに発見できると思います。
原因
①先天的に起こる場合 と ②事故などの外傷や腹圧の上昇によって起こる場合 がありますが、犬の場合は先天的なものが多いようです。先天的な原因は明らかになっていませんが、遺伝が関与もあるのでは・・と考えられています。後天的に起こる場合でも、生まれつき鼠径部に異常があり、これが素因となっていると考えられています。腹圧が高くなる事(食後やよく吠える場合)なども一因と言われています。
症状
“穴(隙間)”が小さい場合は、ヘルニア部分が膨れている以外は無症状です。反対に、“穴(隙間)”が大きければ、ヘルニア内に小腸などが入り込んでしまい、腸の動きが悪くなります。頻回の嘔吐や下痢、便秘、元気や食欲の低下と言った腸閉塞の症状を起こします。さらに腸の絞扼(締め付けられる事)が起こると、ヘルニア部分の色が赤くなり、熱を持ち、最悪の場合、腸の壊死(出ている腸が死んでしまう事)が起こります。そうなると、腸の部分的な切除が必要になります。この場合、飛び出した部分を押しても元に戻らず、痛がることもあります。また、(妊娠子宮を含め)子宮や膀胱が飛び出すこともあります。
治療
ヘルニアが小さければ経過観察(大きさや症状に変化がないかを定期的に確認する)を行う場合もありますが、基本的に妊娠や過度の肥満によってヘルニアが拡大する可能性があるため、外科手術が推奨されます。腸や子宮、膀胱といったお腹の中の臓器がヘルニア内に飛び出している場合は、外科手術で元の場所に戻してあげる事が必要となります。
お家では、常に動物さん達の体を良く触り、スキンシップをはかって下さい。そうすると、色々な体の異常を早期に発見する事が出来ます。もし、変わった事があれば、かかり付けの動物病院に相談し、診てもらいましょう。