膵炎について

“膵炎”と言うと、飲み過ぎや食べ過ぎ、メタボなおじさんたちが罹りやすい生活習慣病の代表的な病気の1つです。アルコールの多量摂取や血中の中性脂肪の慢性的な上昇(高脂血症)などにより発症する男性に多い急性疾患です。重症急性膵炎では死亡する場合もあることから、非常に怖い病気です。
 犬や猫ではどうでしょうか?犬にも人間と同じく急性膵炎と慢性膵炎があります。人間ほど重篤化しやすいわけではありませんが、軽症で済むケースもあれば、重症化して重度の痛みを抱えながら死亡する事もある危険な疾患です。人間と共通する事柄と言えば、食餌性による急性膵炎が多いということです。人間の場合は自分で好きなものを食べて飲んで膵炎になりますが、犬の場合、飼い主の与える食べ物によって膵炎が作り出されてしまうと言っても過言ではありません。
 ◎ 膵炎はかなり稀な疾患ではなく、とても一般的な病気です。
原因
 消化酵素を含んだ膵液が膵臓内で活性化し、自分の膵臓を消化することで問題が生じます。
 膵臓は血糖値を下げるインスリンの分泌をする他、消化酵素を産生し、消化管(腸)へ送り出すことで食べ物の消化を助けるという役割も行っています。消化酵素としては、蛋白質分解酵素や炭水化物分解酵素、脂質分解酵素を分泌します。通常、膵臓内ではそれ自体では働かないように保存されていますが、何らかの原因でこれらの消化酵素が膵臓内で活性化し(働き出し)、自分で自分の臓器(膵臓)を消化し始める事で症状が現れます。
 このような状態になる原因として、脂肪分の多い食事や肥満、高脂血症、高カルシウム血症、副腎皮質機能亢進症、上皮小体機能亢進症、ウイルスや寄生虫の感染、特定薬物の投与、腹部の外傷、手術による併発症、激しい嘔吐、腫瘍や異物などで膵管が閉塞した時などが挙げられます。しかし、これらの原因が複合している場合が多く、原因を特定する事が難しいとされています。
 膵炎には急性膵炎と慢性膵炎があり、急性膵炎の方が重度な症状が出ます。
症状
 膵炎の症状は、急性と慢性で異なります。犬の急性膵炎の場合、発熱や元気・食欲の低下、強い腹痛、呼吸速拍、激しい嘔吐、下痢(黒色便)などが現れる事が多いですが、軽症の場合、症状自体がほとんどなく、食欲不振しか症状が出ない時もあります。重症の場合には、全身的な炎症(SARS)やDIC、敗血症に発展し、数日で亡くなる事もあります。慢性膵炎の場合、程度は軽いものの、急性膵炎とよく似た症状を断続的に起こします。
 猫の場合、犬と異なり、症状を出さない軽度の慢性間質性膵炎の場合が比較的多いとされています。必ず嘔吐が出るという事はなく、倦怠感や体重減少、元気や食欲の低下などが見られます。そのため、診断が下るまでに多くの時間を要したり、解剖病理検査で膵炎が確認されることもよくあります。ちなみに、猫では解剖学的に胆管と膵管が一緒になって十二指腸に繋がるため、膵炎と胆管炎や肝・胆管炎が同時に発症することが多々あります。また、免疫が関与しているとされるリンパ球性・プラズマ球性肝・胆管炎が見られる事もあります。そういった理由で、“黄疸”を示すような症例では「膵炎」の同時発症も疑います。
診断
 臨床症状と一般的な血液検査に加え、レントゲン検査、腹部超音波検査、特殊血液検査(犬/猫膵特異的リパーゼ)などの検査を行い、総合的に判断します。
治療
 犬、猫共に膵炎の治療は内科療法が軸になります。静脈内輸液療法を行うとともに制吐剤や鎮痛剤、抗生剤などの投与を行います。重症の場合、血漿輸血やヘパリンの投与も検討します。また、短期間絶食後、経口/経腸チューブによる低脂肪・低蛋白食などの栄養補給などを行います。
 以前は絶食絶水が勧められていましたが、絶食絶水による悪影響が指摘され始め、今ではより早期に栄養を取ったほうが良いとされています。この栄養補給の開始時期は決まっているわけではありませんが、一般的に腹痛や嘔吐の消失、食欲が認められる場合、少量の水や流動食(低脂肪)から与え始めます。経口的に摂取不能な場合には、胃チューブの設置や経静脈的なアミノ酸や脂肪の点滴も考慮します。
 一方、猫では、絶食をすべきではないというのが現在の見解です。猫では犬と違って、嘔吐もなく、食欲不振が見られるだけであることが殆どなので、強制的にでも食べさせる方が回復に重要であると考えられています。また、絶食期間が長くなることで“肝リピドーシス”といって、食餌で蛋白質を摂取しないと肝細胞内が脂肪で置き換わり、肝細胞が死滅し、最終的には亡くなるといった事が引き起こされます。
予防
 日頃からバランスの良い食事による過剰な脂肪分摂取の防止と適度な運動による肥満防止が一番効果的です。日々の食餌は“万病の予防”にもなりますが、“万病の元”にもなります。
 嘔吐や下痢は、日常、目にする事のある症状ですが、甘く見ていると一大事になることがあります。自己判断せず、かかりつけの動物病院に相談・診察を受けましょう。


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