猫白血病について(後編)
治療
ウイルス自体を攻撃して、感染を終わらせるような治療法は基本的にはありません。表に出ている疾患(病気・病状)に対して治療を行います。
急性感染期の場合、免疫が高まっている時期なので免疫によるウイルスの排除が効率的に行われるよう、あるいは免疫が細胞を壊す程度を和らげる目的でインターフェロンを投与することがあります。これは、持続感染になる確率を下げる可能性があります。しかし、前にも書いたようにある程度の年齢の猫では感染しても自然にウイルスを排除してしまう可能性があるため、この治療がどこまで・どのくらい有効なのかはよく分かっていません。
持続感染の猫に対しては、現在 出ている個々の病気に対する治療することになります。根本的にウイルスを体からなくしてしまう治療法がないため、対症療法や免疫力を高めるような治療が行われます。
無症状の持続感染猫に対しては、3~4ヵ月毎に身体検査と血液検査を行います。身体検査と血液検査結果に異常がなければ、次の3~4ヵ月に重大な病気が起こる可能性は低いと考えられます。発症のみられない持続感染猫で、ごく稀にウイルスが陰転することもあるので、年に1回程度、ウイルス検査を行うのがよいでしょう。
感染予防
最も効果的な予防法は、感染猫との接触を断つことです。このためには、検査による陽性猫の検出と隔離が最も効果的であることがわかっています。完全室内飼育では、感染の可能性は非常に少ないと考えられます。しかし、万が一 外に出てしまったり、外から猫が入り込んだりして猫白血病ウイルスに感染している猫に咬まれてしまう事も考えられます。ワクチン接種は猫白血病ウイルス感染を予防する有効な方法です。ワクチン接種が必要とされる猫では、8週齢以降に初年度は2回、その後年1回接種します。接種前に必ずウイルス検査を行い、感染していないことを確かめてから接種します。感染の防御率は80%~90%で、副作用として発熱・元気食欲の低下などの症状や線維肉腫の発生が挙げられます。線維肉腫の発生率は1万~2万分の1ともいわれており、他のワクチン・注射でもその発生の危険はあります。猫白血病ウイルスワクチンだけが特に危険であるというわけではありません。
発症予防
発症を予防するには、猫の飼育環境や栄養管理とともにストレスからの回避が重要です。これはストレスが病気の発症に深く関与していると考えられているからです。特に外でのストレスは雄猫では大きく、冬場の寒冷のストレスが加わるとさらにストレスは大きくなります。ストレス回避と前にも書いたように避妊・去勢手術は猫白血病ウイルス感染症の予防に有効であると思われます。
環境消毒と人への影響
家庭内での感染の予防には、石鹸やアルコールで手をしっかり洗い、人間がウイルスを運ばないようにすることが大切です。
FeLVが人間を含めた他の動物に感染するという証拠はありません。万一、感染猫に咬まれたとしても、人間が感染する恐れはないと考えられています(人間の血清成分中にはFeLVを不活化する成分が存在するためです)。