猫免疫不全ウイルス感染症(FIV)について…後編
検 査
感染しているかどうかは血液検査で簡単にわります。抗体を測定する方法で感染初期や末期のエイズ期では陰性になることも考えられますが、通常、感染後2週間以上経てば抗体の測定が可能となります。拾ってきた猫を飼い始める時や外に出てけんかをした時は検査をすることをお勧めします。
治 療
ウイルスを体からなくしてしまう治療法は現在のところありません。ですので、出ている病気に合わせて対症療法を行うことが基本的な治療となります。エイズ期以外であれば対症療法によって症状を改善したり、延命することは十分可能です。例えば、口内炎に対しては、カリシウイルスの持続感染と口腔内細菌の両方が原因になっている可能性を考え、インターフェロンと抗生物質を使用します。ただし、完治することは稀で、時には激しい炎症をコントロールするためにグルココルチコイド(副腎皮質ホルモン)の長期的使用が必要なこともあります。治療に反応すれば、食事が可能となり、体重も増え、貧血が改善することもしばしば経験します。逆にこれを放置すれば、痩せて貧血が進行し、免疫力をさらに低下させることになり、その結果、他の疾患が発症し、死んでしまうこともあります。
無症状の感染猫のモニターとしては、3~4ヵ月毎の定期的な検診をすることをお勧めします。身体検査や血液検査を行い、全身的な評価により病期の進行がないかモニターしていきます。
予 防
最も効果的な予防法は、感染猫との接触を断つことです。日本の外猫のウイルス抗体保有率は10%を越えていると言われており、けんかをすると感染する確率は高いと思われます。ですから、外に出さない=猫の室内飼育を徹底することと、検査による感染猫の検出と隔離が最も効果的です。
感染している猫でも発症していない場合、できるだけストレスをさけ、家の中で飼えば長生きさせることが可能です。ストレスは免疫力を低下させる原因となります。猫にとって外に出ることは非常にストレスであり、さらにケンカなどのによる怪我や病気に罹る機会を増加させます。避妊や去勢手術をして外に出さないことがこのウイルスに感染している猫を長生きさせる一番良い方法です。また、なんらかの病気を発症した場合、早期に発見して適切な治療を受けることが重要です。極力ストレスを与えないようにして栄養状態を良好に保ち、抵抗力の維持につとめることが重要です。
昨年の7月より猫エイズウイルス感染症に対するワクチンが接種可能になりました。申し訳ありませんが、当院では現在のところ性急な導入を見合わせておりますが、ご希望の方は、info@hearts-ac.jpまたは、電話(084-926-3355)で問い合わせください。
家庭内に感染猫がいる場合には、咬み合わない限り感染の機会は極めて少ないと言えますが、一般的な衛生管理として、石鹸やアルコールで手を洗い、人間がウイルスを運ばないように気をつけて下さい。
猫エイズウイルス感染症が人間を含めた他の動物に感染するという証拠はありません。万一感染猫に咬まれても、人間が感染する恐れはないと考えられています。