糖尿病の食事管理について
糖尿病の基本的な治療方法は、血糖値を下げる“インスリン”の注射ですが、適切な食事療法もまた、糖尿病治療を補助する大きな要素となります。
食事療法の目的とは…
・ 高血糖の状態にある時間を出来るだけ縮める
・ 血糖値の変動をなるべく小さくする
・ 結果、体内のインスリン必要量を節約することが可能
通常、食後には血糖値が上がりますが、これは主に食事中に含まれる炭水化物量に関係します。食後の急激な血糖値の上昇を抑えるには、消化・吸収速度の早いもの、中程度のもの、遅いものなどの炭水化物を組み合わせて、一度に集中して食後 高血糖が起こりにくくする事や腸で水分を吸ってゲル状になる食物線維を配合して吸収速度をゆっくりするといった方法があります。
また、肥満によってインスリン感受性が低下している場合には、体重を落とすことによって感受性が高まり、インスリンの必要量が少なくなる場合もあります。特にネコの場合、肥満によりインスリンが効かなくなっていることがありますので、食事療法などで体重を落とすこともお薦めします。
~ 個別の栄養組成 ~
1.蛋白質
糖尿病に伴う腎臓疾患の進行を防止するため、蛋白質の過剰供給は避けましょう。蛋白質に含まれるアルギニンは、インスリン分泌を助けると言われています。
2.炭水化物(糖質)
犬と猫の糖尿病に対する炭水化物組成の影響については十分な評価がされているとは言えません。各炭水化物により血糖値上昇指数(GI値)が異なります。これが犬猫の糖尿病患者の管理に影響を与えることは確かですが、食後の血糖値の変動は与える食餌中の栄養組成(糖質のDM%など)と、含まれる繊維質のタイプと量に影響を受けると考えられるため、十分な評価がされていません。
猫は、フルクトース(果糖)代謝ができないため、果糖を含む食餌を与えてはいけません。猫に果糖を与えると果糖不耐性と多尿、腎障害を起こす危険性があります。一般的には、高タンパク/低炭水化物の組成の食事を与えましょう。
3.食餌性繊維質
食餌性繊維質は腸管でのグルコース吸収を遅延させるため、血糖値のコントロールにおいて大変有効です。加えて、高繊維食の給餌により体重の減少が見込まれ、体重減少はインスリン応答の改普にも繋がります。
また、繊維質は脂質代謝にも関与し、コレステロールとトリグリセリドを減少させます。糖尿病患者では脂質代謝異常が起こり、高脂血症を併発している場合が多く見られるため、併発疾患として膵炎が起こる可能性があります。過度の脂肪を含む食餌は避けた方が良いと考えられます。
犬と猫の糖尿病管理において中等度(8~17%)の繊維質を含む食餌が良いと考えられています。しかしながら、このような食餌を使う場合、患者に十分な水分供給を行うよう注意して下さい。繊維質が消化管内の水分を捕らえる事、高血糖を示す患者の場合、胃-大腸反射が低下している事により便秘傾向になる場合があります。
すでに削痩している患者に高繊維食は適切ではありません。この場合には一定期間は適切なカロリー供給のできる食餌が必要となります。
4.ビタミン類
糖尿病患者では多尿により水溶性ビタミン(B群とC)ならびにカルニチンが減少しやすいと考えられています。ビタミンの増減が糖尿病管理に影響を与える可能性はあると思われますが、現段階では、はっきりとした結論は出ていません。カルニチン(L-カルニチン)は、肥満動物に補給すると体重減少が効率よく行われ、除脂肪体組織の温存効率をより良好に達成します。
効率よく消化吸収されるために消化器疾患には常に注意を払います。具体的には、嘔吐・下痢の予防と寄生虫感染に対して糞便検査を定期的に行う事が良いと考えられます。また、インスリン療法とのかね合いはありますが、ダラダラと血糖値が上がらないように食餌回数は2回にします。そして飼い主さんの生活パターンに合わせて、無理がないように食餌時間を設定することが重要です。