炎症性乳癌について
発生率
炎症性乳癌は、犬の乳腺腫瘍全体の10%以下に発生する悪性の乳腺腫瘍です。ある報告では、悪性乳腺腫瘍の17%を占めるとも言われています。高齢の大型犬種に多いといわれていますが、小型犬種でもその発生は認められます。
腫瘍の特徴
炎症性乳癌は、乳腺に熱感や腫脹(腫れ)を伴い、一見すると乳腺炎のようにも見えますが、その性格は乳腺炎とは大きく異なります。炎症性乳癌は、周囲組織への浸潤性(ガン細胞が増殖し周囲の組織へ広がっていく性質)が非常に強く、炎症を伴いながら周りへと広がっていきます。板状の硬固な“しこり”を形成し、重度の炎症により熱や痛みを伴うことが多く認められます。また、炎症が強くなるとリンパの流れも障害され、後肢がパンパンに腫れて、むくんだ様な状態(浮腫)になることもあります。さらに、炎症性乳癌は、転移性も非常に高いと言われています。ですので、初診時にすでに肺転移を起こしていることも珍しくありません。
治療
現在のところ炎症性乳癌に対する効果的な治療法はありません。
普通の乳腺腫瘍の場合、腫瘍があれば「早めに取る」が基本なのですが、炎症性乳癌の場合は「切ってはいけない」とされています。これは、強い炎症と周囲への浸潤性を伴っている腫瘍なので、手術後、すぐに より激しい炎症が起こり、手術周囲が赤く腫れあがり、傷自体もきちんと治らない事が多いためです。ですので、手術をせずに鎮痛・消炎剤などを使いながら対症療法をしていくしかありません。もちろん、ごくごく初期で手術し何事もなく治癒したが、炎症性乳癌だったと言う事はあるかもしれません。
死亡率がとても高いので注意が必要です。