睾丸腫瘍 ~セルトリ細胞腫について~
胎児の時、犬の睾丸は、お腹の中(腎臓のすぐ後ろあたり)にありますが、出生間近になると徐々に下降し、生後2ヶ月頃までにはあるべき場所(陰嚢内)に降りていきます。犬種によっては、4~8ヶ月くらいかかることもありますが、この現象が正常に起こらず、睾丸が腹腔内や鼠径部(足の付け根あたり)などに留まってしまうものを潜在精巣または陰睾といいます。片側だけ起こる場合と両方共に起こる場合があります。純血種に比較的多くみられ、遺伝性とも言われています。潜在精巣の場合、腫瘍化する事が多く、ある報告では、発生率が約20倍高くなると言われています。
精巣は、男性ホルモンを分泌したり、精子を作ったりする雄特有の臓器です。精巣腫瘍と睾丸腫瘍は同じ意味で使われる事が多く、犬では人よりも多く見られます。精巣腫瘍は、主に3種類-セルトリ細胞腫、間質細胞腫、精巣上皮腫-が存在します。今回は、その中のセルトリ細胞腫について勉強しようと思います。
症状
セルトリ細胞腫は精母細胞を支持する細胞で女性ホルモンであるエストロジェンを生産する細胞の腫瘍です。ですので、この腫瘍が出来るとエストロジェンが無秩序に大量放出されます。左右対称の脱毛や色素沈着(皮膚が黒くなる事)などの皮膚の変化、雌犬のような乳房の張り、あるいは骨髄での造血が障害されるなどの致死的な影響が出ることがあります。また、腫瘍が大きいほど悪性腫瘍である可能性が高く、転移しやすい傾向があります(約10%)。転移病巣においてもホルモン活性を示すと言われています。
発症時期
中高齢ころから起こりやすくなりますが、2~3歳での発症も報告されています。
治療と予防
精巣腫瘍が疑われる場合、早期の精巣摘出(去勢手術)が一番の選択になります。転移が無ければ、精巣腫瘍に関連する症状は1~2ヶ月でなくなります。また、去勢手術を行う事で前立腺肥大などの男性ホルモンの関連した問題は解消されます。
予防法は、去勢手術です。特に、精巣が所定の位置にない潜在精巣の場合、年齢を重ねる前に手術で摘出してあげたほうが賢明です。精巣のある位置によっては少し大変な手術になるかもしれませんが、病気への予防と考えると利点は大きいと思います。まずは、かかりつけの動物病院へ相談してみて下さい。