肥満について ②

Ⅳ.肥満の診断
最も一般的な肥満の評価法は、視診や触診によって肥満度を主観的に分けるボディコンディションスコア(BCS)です。この評価方法は、5段階評価法と9段階評価法があり、いずれも数字が大きいほど肥満度が高く、小さいほど痩せている状態を表しています。ですので、適正な栄養状態は、それぞれBCS=3/5とBCS=4/9になります。では、“適正な栄養状態”がどういう基準で決められるかと言うと、

① 肋骨の隆起に軽く触れることができる
② 上から見ると腰部のくびれがはっきり確認できる
の2点を満たしているかどうかで決められます。この条件を満たしていれば、体脂肪率は約15~24%になります。ただし、熟練者でなければこの数値も異なるので注意が必要です。
ヒトで使用されている体格指数(BMI)と言うものもありますが、犬の場合、品種によって体型が異なるため実用的ではありません。しかし、猫では、体格の差が犬より小さい(猫の頭胴長と後足長が肥満度に影響されない)ことから、BMIの研究も進んでいます。まだ、確定されたBMI測定法ではありませんが、
猫のBMI = 体重(kg)/(頭胴長(m)+ 後足長(m))
と提唱している研究者もいます。彼らの報告によると、適正体重の猫では、BMI=4.2~6.8になると言う事ですが、まだまだ多くのデータの蓄積が必要という事です。
その他の診断方法として、超音波検査による腰背部皮下脂肪量から肥満度を推定する方法や特殊なレントゲンによる体脂肪量の評価(通常レントゲンでは、皮下脂肪や一部体内脂肪の厚みしか分かりません)、CTによる皮下脂肪と内臓脂肪の部位別評価などの方法があります。CTを利用する方法に関しては最も有効性が高いと思われますが、検査にかかる時間や費用を考えると簡単に行えるとは言い難いようです。
肥満している動物の血中因子は様々に変動します。特に “レプチン” の血中濃度は肥満になるにつれて上昇する事が判明していますが、残念ながら、現段階ではまだ測定できるまでには至っていません。
Ⅴ.治療
①食事療法
食事療法は、肥満治療の最も基本的かつ一般的な方法です。肥満の成因は摂取エネルギーが消費エネルギーを上回ることなので、効率よく摂取エネルギーを減らすことが肥満解消の第一歩になります。目標体重の維持エネルギーを基準にして、実際の食事量をその60~80%にすることが一応の目安になっています。食事量を少なくするほど減量はより早く行われますが、同時に筋肉の喪失量も大きくなります。また、患者さんのストレスも増し、継続が困難になる傾向にあります。ですので、特に減量開始時には軽度の食事制限(1週間で体重の1~2%減を目標)とすることが推奨されています。また、猫では急激な減量が脂肪肝を引き起こす危険があるため、更なる注意が必要です。
単純にフードの食事量を減らせば摂取エネルギー量はもちろん少なくなりますが、犬や猫が1日に食べるフードの量はある程度決まっているので、食事量の減少が空腹感や物乞い行動、ストレスの原因になります。この問題をクリアするため、広く用いられているのが減量用の療法食です。このフードは、“かさ”を増し満腹感を生じさせ、過度の摂取を抑制するため高繊維で、体脂肪に変換されるときのエネルギー消費が少ない脂肪を少なくしています。ですので、減量用の食事は、とても効果的に減量できるわけなのです。
痩せるには食事量をある程度、少なくすると良いことは分かりましたが、高繊維で低脂肪だけの食事で良いかというとそういう訳ではありません。適切に体内の代謝を維持するには、タンパク質の供給が必要です。アミノ酸、特にその中でも “リジン” の比率(リジン/カロリー比)が高いタンパク質を供給することで、より適切な代謝バランスを保ちながら減量が可能となります。この事は、遺伝子レベルでの裏付けもあるようです。
減量に関わるサプリメントも多くありますが、信頼できる情報は今一つありません。ただ、実験的に確かめられているものは存在し、それはL-カルニチンです。L-カルニチンは、脂肪の燃焼を助ける作用があり、減量効果が高められる事は事実です。ただ、脂肪燃焼だけで抗肥満効果を引き起こす方法論は、最近、異議が投げかけられているようです。
②運動療法
エネルギー消費を促すうえで最も生理的で、副作用の心配がないのが運動療法です。ある試算によると、12.5kgの肥満犬(BCS=5/5)を運動療法のみで減量するには1日14kmの運動が必要という計算になるそうです。基礎代謝率も運動による消費率も個体差があります。ですので、これで大丈夫といったものはありません。継続が可能なレベルでは、通常、15~30分間のウォーキング、または、5~15分間の水泳を週に5~7回が推奨されています。
しかしながら、呼吸器や循環器、関節に問題を抱える場合は、運動療法を積極的に取り入れることは困難です。このような疾患の場合、運動を行うことで症状の悪化を招くことがあるからです。しかし、股関節異形成を持つ過体重の犬が1~2割の減量で明らかに歩様の改善があったと言う報告があるように、肥満治療は関節疾患の改善という意味でも重要です(勿論、適切な外科や内科治療が行われていることが前提です)。
③薬物療法
薬物療法は、ヒトでは肥満治療の重要な選択肢の一つになっています。動物の世界では、十分な効果や安全性が認められている薬物は今の所、ありません(つい最近、動物用の減量用薬物が発売される予定でしたが、延期になりました…)。
海外では、dirlotapideやmitratapideといった薬物が使用されています。これらの薬は、食欲抑制効果と持ち、脂肪吸収を抑え、減量効果を発揮するとされています。
研究段階の薬として、β3アドレナリン受容体作動薬があります。これは、脂肪組織の褐色脂肪化を引き起こし、エネルギーを熱に変える脱共役蛋白質の発現を誘導して体脂肪を減少させます。ただ、禁忌症例の有無などの詳細は不明で、今後、より多くのデータの蓄積が期待されています。
最後に、効果の面からいうと薬物療法は最も効果が期待できそうです(国内では未発売ですが)が、肥満治療は①~③の組み合わせによって実施すべきものです。食事療法を行わず、薬だけ飲ませていればいいと考えるのは間違いだと思います。基本的には、食事と運動療法を行い、この治療法が使えない場合や極度の肥満で早急に減量の必要がある場合などは薬物の使用を選択すべきではないかと思います。
肥満は元気だから見逃している病気です。個人的には、減量はとても難しい治療だと思います。ただ、そのままにしておくと多くの問題(病気)を抱える事になりかねません。まずは、出来ることから焦らずやっていくことが重要です。減量できずに困っている場合は、遠慮なくご連絡して下さい。


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